蔵本モデルとは「非線形振動子の同期現象」を記述するモデルです.
同期現象とはホタルの発光パターンやら,LCR回路やら,拍手やら,日常生活(?)でもよく目にする一連の現象です.
システムは$N$個の振動子からなり,それぞれの振動子$\theta_i$の支配方程式は以下のようになります.
$\omega_{i}$は各振動子固有の振動数です.今回は平均値(=10)まわりの標準偏差$\omega_{sd}$の一様乱数で与えています.
右辺第二項は振動子間の相互作用の強さを表しています.位相差のsin関数で相互作用が表されているのが蔵本モデルの特徴です.
相互作用の結合は,次数$k$のレギュラーランダムグラフで与えられることにします.
結合数が増えても相互作用が増えていかないように$k$で相互作用項を規格化しています.$J$は相互作用の強さです.
蔵本モデルのシミュレーションは眺めているだけでも楽しいですが,オーダーパラメータという量を知るともっと楽しくなります.
蔵本モデルのオーダーパラメータ$m$は以下のように定義されています.
$m$の定義式をよく眺めると分かるのですが,振動子の位相が揃っていると$m\sim 1$,振動子の位相がバラバラだと$m\sim 0$となります.
この振る舞いに注目いろいろなパターン分けができる事と思います.
僕がいろいろパラメータを弄ってみて見られた相(=パターン)の例としては,
このように,$m$の値が各種パラメータによってシステムの性質ががらっと変わる事を相転移って呼んだりします.
ちなみに蔵本モデルでは$J$の値を$J=0$から徐々に大きくしていくと,最初はバラバラあった系が,ある値$J_T$あたりから突然$m\sim1$付近に張り付くような同期現象が起こることが知られています.
蔵本モデルは,この相転移現象の理論的な解析解が計算できるということから有名です.