この記事は基本的に物作り趣味で展示する人の為に書かれた記事です。

12月23日にあったrogysemi5thで発表した内容のweb版です。
後半はこちら

きたろーです。

この記事で展示者に対して伝えたいことは
「非専門の人を大切にしよう」
「質問は善意によってなされる(と考えよう)」
あと具体的な質問回答の方法です。

1. 展示を見にきた,ものつくり作品見学慣れしてない人の思考

展示を見にきた人は作品の説明を受けた受けないに関わらず,
作品に興味を持てば何かしらの質問をしようとします。
それはその質問内容を本当に知りたいからという理由もありますが,
会話を楽しみたいから,作品情報が面白そうだからという理由もあります。

僕自身が見る側で展示者が面白そうな方でしたら,
しばしば色々な質問やコメントでつついてみることで会話を引き出そうとします。
お客さんによってはきちんと対面で作品説明をして貰ったのに
何も質問やコメントを返さないことを不義理だと捉える方もおられるようです。

さて,ここでものつくり作品見学慣れしてない方は「とりあえず」で
どういう質問をするでしょうか。

・技術的なことは聞いても分からないかもしれない。
・お金のことを聞くのは失礼かもしれない。
・製作時間や人数を聞いても具体的な数字が帰ってくるだけで面白くなさそう。

さてここで出てくる,どんな作品,研究に対してでもとりあえず聞ける質問が
「これは何の役に立つんですか?(有用性)」という質問です。
ちなみに僕がおススメしたい汎用質問は
「どうしてこれ作ろうと思ったんですか?(動機)」です。

こういった質問はしばしば
「今日は良い天気ですね!」
と同じ会話のきっかけとして使われます。
この質問がきたら
「私はあなたと話がしたいです」
という表明が貰えたと喜びましょう。

2. 「工学」と「ものつくり趣味」の混同
工学系の研究者は必ず「何の役に立つか」という質問に
答えられるよう日々気を付けています。
なぜなら工学は「人の役にたつための学問」だからです。

よって工学系の研究に対しては
「これは何の役に立つんですか(有用性)」
「どうしてこれを作ろうと思ったんですか(動機)
は概ね同じ意味を持つ質問になります。

しかし趣味で物を作っている人にとって2つの問いは異なる意味になります。
鉄道旅が趣味の人や,切手集めが趣味の人に
「どうしてそれをしようと思ったんですか(動機)」
と聞くと,鉄道旅の醍醐味や切手の魅力を教えてくれるでしょう。
しかし
「それは何の役に立つんですか?(有用性)」
と質問したら変な顔をされると思います。
人によっては気分を害します。
趣味はそれ自体が目的ですね。有用性を聞くのはちょっと変です。

ものつくり趣味も一緒です。

しかし,ものつくり趣味は工学研究と紛らわしいですし,
2つの質問をつい同じノリでしてしまう人は多いです。

3. 質問は善意によってなされる
さて1,2を通して質問者に悪意は欠片も無い,ということが伝わりましたでしょうか。
納得がいかないという方は「Wikipedia:ハンロンの剃刀」を読みましょう。
誤解という仮説で充分に説明ができることに,悪意を持ち込む姿勢は科学的ではありません。
まぁ稀に意地悪な爺さんが嫌がらせとしか思えないコメントをくださることも
ありますが,とてもレアケースなのは間違いないです。

そして悪意のない質問に対しては学問の徒である以上まじめに考えて答えるべきです。
ラザフォードさんによれば
「物理の原理をバーのウエイトレスに説明できないのであれば、
それはウエイトレスではなく、その原理に問題があるのだ。」
とのことです。
#もちろん質問に忙殺されてしまう教授や有名人ならあるレベル以下の質問を切り捨てることも必要だと思います。
が,普通の人が学生のうちからその判断をするのは早すぎると僕は思っています。
コミュニケーション練習だと思ってがんばりましょう。

非専門の人の思考を尊重しましょう。
素人思考が大切であることは多くの研究者の認めるところです。
また僕らの展示で少しでも非専門の人が理系の世界を理解してくれれば,
理系の住みやすい世界になるかもしれません。

さて
へ続きます。